私は数学が大の苦手でした。
成績全般振るわず、高校も補欠でどうにか滑り込みました。
ところが高校で数学教師のK先生と出会ったことで、それが一変しました。
数学の面白さに気づき、好きになり、テストの点や成績が上がり始めたのです。
すると、他の教科も引っ張られるように伸び始め、学年でも上の成績が取れるようになりました。
最下層の順位をウロウロしていた私が…!と、自分が一番びっくりしましたが、
それはほんの数か月の間に起きました。
そして卒業する頃には、校内で一人しか選ばれない進路の枠に入れてもらえ、推薦が取れるまでになっていました。
もともと私は飽き性で、毎日何かを続けることが大の苦手です。
さらに、勉強は難しくて、厄介で、自分には理解できないものだと頑なに信じていました。
そんな私がなぜ勉強を続けられたのか?
それは
ひとえに楽しかったからです。
K先生は、ごくごく初歩的な因数分解の小冊子を一冊私にくれました。
ノートよりも薄く、問題数もめちゃくちゃ少ないものです。
そして、
「実際の授業の進み具合とか、教科書とかは無視して良いから。
君はこれだけをやればいいよ」
と言いました。
K先生は週に一回か二回、数十分間、放課後の空き時間を利用して私を指導しました。
冊子を使い、一つの式の解き方を教え、それの応用問題を完璧に解けるようになると次のページに進む、という教え方でした。
そして、次に指導するまでの間は今日進んだ部分だけを
何度でも繰り返し解くように言い、後は放置。
私の自主性に任せました。
基本の問題を繰り返し解く。それは簡単なことでした。
「勉強」なのに、難しくないのです。
難しくないので、毎日続けるのも苦ではありません。
しかもやればやるほど解くのが上手になるので気分がいい。
だからだんだん楽しくなっていき、サボろうという発想が湧かなくなりました。
そして、ある時、すらっと公式が解ける瞬間がやってきました。
その驚きと喜びときたら!
「数学って面白いじゃん!!勉強楽しいじゃん!!」
初めてそう思えました。
その時、私の脳内に根深く居座ってきた、
【勉強は難しくて、厄介で、自分には理解できないもの】
【私は飽き性だから勉強を続けるなんて無理】
という概念が覆りました。
オセロの玉のように、黒が白にひっくり返ったのです。
そこからはスムーズでした。
楽しいので、自ら進んで勉強します。
楽しいので、自然に意欲も湧いてきます。
楽しいので、創意工夫も厭いません。
途中で難しい問題にぶつかっても、後で楽しくなると分かっているので、めげずに粘り強く取り組み続けられます。
楽しいという感情や感覚は偉大だとつくづく思います。
K先生の指導をきっかけに、勉強に興味を持ち始めた私は、
図書室で勉強をするようになりました。
そこで文芸クラブの先輩たちと知り合いになり、
期末や中間などのテスト期間中は、その先輩たちと勉強するようになりました。
その時私は生まれて初めて、他人のテスト勉強を目の当たりにしました。
(成績が悪ことがコンプレックスだった私は、自分のおバカ加減がバレるのが嫌で、友人と一緒に勉強するのを避け続けていたからです(^^;)。
カラフルなペンを多用して、分かりやすいノートを作っている人
参考書を活用している人
単語帳オンリーの人
教科書をひたすら書き写す人。読み込む人…
どれも新鮮で、面白くて、私は全部試してみました。
その後、
「自分に合っている」
「気分が良くなる」
「それをやること自体が楽しくて、無理なく続けられる」
と感じる方法だけを残し、あとはやめました。
それが、勉強をますます楽しくしてくれ、
捗らせ、成績をもっと上げる結果になりました。
また、
【何事にも色々な方法が存在し、自分に合った方法は必ず見つかる】
【勉強が出来なかったのは、それに出会っていなかったから】
【私はバカじゃない。ちゃんと見込みがあるんだ】
と気づけたことも、とても大きな収穫でした。
今思い返してみても、
忙しい中、担任でも何でもない生徒に時間と労力を割いてくれたK先生の、
優しさと根気の良さ、そして落ちこぼれの私を信じようとしてくれた心意気には、感謝しかありません。
また、
勉強に付き合ってくれた先輩方や、そうした環境に身を置けたご縁にも、
感謝するばかりです。
この経験から得たものを要約すると、
■どんな事でも、心を開き、自ら願い、やり続ければできるし、叶う。
■苦手意識や思い込みは、事実ではなく、事実は自分がいくらでも上書きできる。
■人との出会いを大切にし、感謝し、そこから学ぶ姿勢を持つ。
■自分にとって合っている方法を見つけるまで諦めない。
■楽しい感覚を大切にし、楽しくなるように自分で創意工夫する。
そして、
■人はいつからでもどんな困難な状況からでも変わることができる。
これらの気づきは
50歳近くになった今でも私を支え続けています(*´▽`*)
きみこ